前回の最後に、高点法を正確に当てはめることにより、ルールの趣旨を逸脱する例を挙げました。
をツモるとカンチャン待ちの2符が付き、
8点(の暗刻)+2点(ツモ)+2点(カンチャン待ち)=12点
となり、切り上げ計算のいわゆる「点パネ」になる。
競技を始めてから98年にMCRのルールができるまで、こういうことには何の疑問も持ちませんでしたし、むしろそういうところに技術的に対応できることが競技能力だと考えていたように思います。
例えば、1300・2600をツモアガる必要があるときに
を切ってリーチするとか。
リャンメンをわざとカンチャンにして2符をゲットしにいく。
を捨ててリーチする。
のノベタンなら、どちらをツモってもタンキ待ちの2符がつき、待ちにするとをツモった場合2符がつかない。
今は競技者であること以上に普及に携わる者の立場で考えると、いっそのこと符を無くしてしまえば良いのではないかという結論に導かれます。
なぜそう考えるかというと、符がマージャンファンのハードルになっているからです。
今やネットゲームでマージャンを覚える方が増えています。ご存知のように得点計算は自動なので、自分で計算する必要はなく(成績にこだわらなければ)、そのノウハウは身につきません。
そういうファンが、リアルデビューすることに符が絡んだ得点計算が大きな足かせになっていると思うのです。
また、健康麻雀が広まり、高齢で麻雀を覚える方も増えてきました。麻雀が認知症予防に効果があることは脳科学者の研究により明らかになっており、初心者も楽しめるようにすることが、社会的要請と言える状況になっています。
※日本健康麻将協会のルールには「ウェルネスマージャン・スマートルール」が新設されました。リンクの3、4ページ目を参照。
し、しかも符がなくても麻雀は十分に面白いのです。
お恥ずかしい話ではあるのですが、筆者は20年以上も前にそのことに気付いていたにもかかわらず、ボーッと馬齢を重ねてきたのです。九州のとあるお店に故・安藤満さんと一緒に呼ばれた際、そのハウスルールは符なしでした。
最初はさぞかしつまらないだろうな思いながら着席したのですが、実際に打ってみると何の違和感もありません。覚えて約25年、符ありしか打ったことのない人間の、単なる喰わず嫌いだったと言えると思います。
思い切り振りきった四川ルール
中国にも良い例があります。「四川(しせん)ルール」です。
※一度「豊中の健康マージャン」さんで四川ルールの勉強会を開いたことがあり、こうして取り上げていただきました。
筆者が中国の友人に聞いた話によると、90年代四川省の麻将愛好家がよりマージャンを普及させるためにはどうしたら良いかを考え、字牌をなくすことを思いついたそうです。
しかも、ルールの中に「欠色」という条項があり、数牌3色の内の1色は使うことができないので、さらにシンプルにプレイすることになります。
※「麻将」は中国の表記で、「マージャン」と読みます。「麻雀」は「マーチャオ」が近い発音でしょうか。本稿では世界中のものを表す場合は「マージャン」、日本に限った場合は「麻雀」という表記で使い分けております。
その狙いの結果はどうであったか。
スバリ大正解! オンラインの四川麻将は同時接続30万人を超えるほど広まったのでした。
ちなみに、四川省では字牌を使わないサイズの専用全自動卓が販売されているほどです。
三元牌、風牌、数牌3種を使った麻雀がいかに難しいかがうかがい知れるエピソードではないでしょうか。
その上に符、さらにフ、フ、フ!
果たして、競技として必要不可欠なものなのか。真剣に問うてみるタイミングだと思います。