もう35年くらい前だと思いますが、101の納会で金子正輝さんが、当時の最高位戦について次のような発言をしました。
「あのルールだと、2着は守りたくなっちゃうんだよね」
それはそうでしょう。当時の最高位戦はトップから+12、+4、△4、△12という順位点。3万点持ちの3万点返しだから8Pずつの均等順位差。トップが特別大きいわけではない。
2着から3着に落ちると成績表にマイナスを記入することになる。トップが取れずに2着で終わってもプラスで記入できるほうが気分がいい。
僕の記憶では、居酒屋の広い座敷部屋で上座に古川凱章先生、両サイドに金子さんと足木健さんがいた。先生はほとんど喋らずに2人のやりとりをBGMにして黙々と飲んでいる印象でした。
僕のような小僧はかなり離れた席である。そのため話がはっきり聞こえたわけではないのですが、どうやら足木さんが「最高位戦と101は打ち方がどうちがうのか?」と聞いたらしい。101と当時の最高位戦はノーテン罰符なし、アガリ連荘とルールは似ていた。金子さんや僕に限らず、当時は101と最高位戦両方に参加している選手が多かったが、足木さんは101だけの選手である。それで、そんな疑問を持ったのでしょう。
それに対する金子さんの回答が冒頭のもの。これを聞いた古川先生が急に声を荒げた。
「2着が守るなんて、そんな麻雀あるか」
そうですね、2着はトップを目指す一番手。チャレンジしなきゃ。トップのみが勝ちですもんね。さすが101の先生。しかし、その後のセリフは少々不可解だった。
「だいたい浮いていればプラスとか、4ポイントだとか12だとか、そんな数字に何の意味がある!? それならいっそ素点だけのほうがマシだ」
どうやら、ご機嫌があまりよろしくないご様子。最高位戦の話題がそれほど嫌だったんでしょうね。
金子さんたちもあわてて話題を変えていました。そのため、先生の発言の意図は説明されないまま終わったのです。
そして時が経ち、現在は競技の世界でも裏ドラ一発が当たり前、それにともない順位点も10・30とか、大きくなる傾向にあります。というか、いろいろな順位点が存在します。
先日、マスターズ(主催・日本プロ麻雀連盟)に出場してきましたが、これは裏ドラ一発ありですが順位点は5・15。順位差ひとつが1万点です。これだと、1順位差よりも親満やハネ満のほうがでかい。トップ目でも手が入ったら、守るよりも攻めたほうが期待値が大きくなる。
ということで、A卓でトップを取った人とB卓でトップを取った人を比べたら、A卓のトップがB卓のトップの三倍のポイントを稼いでいたなんてことがあります。
同じトップなのにですよ。これって他の競技でありますかね? 少なくてもスポーツの世界ではないですよね?
いえ、ルールに苦言を呈しているわけではありません。嫌なら出なければいいだけのことです。
ただ、順位点の大きさによって押し引きのバランス、着順を守る意識と打点のバランスが少しずつ変わるということを理解してほしい。そして、色々な大会に出ていると、このバランスを保つのが難しいのです。
年齢からくるものでしょうが、脳ミソの反射神経の衰えを感じます。
「着順のみか素点のみか、どっちかにしてくれ!」
先生の心境に近づいてきた今日この頃です。
着順勝負だけにしたい
得失点に順位点を加味する方式、主催者が順位点を決めるのでしょうが、色々存在し、統一が取れていません。それに、この方式が世界基準になるとは思えないのです。
素点だけの評価ならば普遍です。その大会で一番点棒を稼いだ人が優勝。そこに第三者の主観による数字は含まれていません。
ですが、僕はやはり順位だけの評価にしたい。
点棒は勝負を決めるための大事なアイテムですが、それの多い少ないだけで勝敗を決めるべきではない。麻雀は対人競技です。誰に勝った、何人に勝ったのほうが重要なのではないでしょうか。
僕は101評価が好きです。以前にも書きましたが、一戦単位での勝ち負けをはっきりさせているから。
しかし、一般的には2着と3着が同評価などに違和感を覚える人が多く、これが麻雀競技の王道になるのは難しいと思います。
次に僕が好きなのは、麻将連合(μ)のスリーポイント方式です。
これは、
1着・同卓者3人に勝った→+3
2着・同卓者2人に勝ち、1人に負けたので2-1=+1
3着・同卓者1人に勝ち、2人に負けたので1-2=△1
4着・同卓者3人に負けたので△3
というものです。
僕自身、このルールで打つのは年に1回ぐらいですが、よほど離された断ラスでない限り、やるべきことが残り、対人競技を打っている充実感があります。
数字にちゃんとした理由があり、広く認知されやすいのではないでしょうか?