逢川恵夢・女流雀王(長いので以下「JJ」)が自身の2回目の原稿で赤牌について触れ、協会のルールを赤ありにしましょう、とのラブコールがありました。
……残念ながら色よい返事はできませんね。
現在、協会ではワンデー大会の「チャンピオンロード」、スパンは長いが勝負を決めるのが2半荘トーナメントの「fuzzカップ」が赤ありルールですが、他では赤牌は使用していません。
他のプロ団体を見渡しても、本場所といえるリーグ戦を赤ありにしているところはありません。
理由は各団体それぞれでしょうが、ここでは僕の考えを記して逢川JJへの返信に変えたいと思います。
世の中で統一されていない
そもそも僕が赤牌を嫌いなのです。
理由としては、ドラが増えると手役の価値が下がり、手作り、正確には手役作りですね、そうしたプロらしい技術の価値も下がる。とくに、チャンタなんて価値が下がるどころか、誰も狙わない役になっています。赤が来たときに使えるように内側に寄せるだけの麻雀がそんなに面白いのか――と思っています。
こんなことを書くと、逢川JJに、
「古い! 手役作るだけが技術じゃない。赤牌をうまく使うのも技術。世間がそれでやっている以上、現実に即した技術を見せるべき」
と言われるんだろうな。
では、もう一つ。赤牌の数って統一されていますか?
麻雀店によっては、赤が2枚ずつの計6枚入っていたり、赤は3枚でも金だのレインボーだのに色付けされたプレミアム牌が入っていたり……そんなお店けっこうありますよね?
もちろん全国的には赤が1枚ずつの計3枚が主流。ネットの麻雀もほぼこれです。
しかし、10年後、20年後もこれがスタンダードである保証はありません。赤2枚ずつの計6枚のネット麻雀が出現してそれが流行れば、あっという間に席巻されそうな気がします。
赤牌の出現は麻雀店側の理由。
赤があれば喰っても高い手が狙えるので進行が早くなる、打点が上がってトビ終了が多くなるなど、ようはゲーム代を上げるために導入されたものです。そのため、赤ありはハウスルールの延長としか僕には思えないのです。
まあ、自分の考えが古いというか、いまの時代に合わなくなっているのではないかという自覚はあります。
一つだけ、言っておきましょう。
僕は協会の代表です。役職ではトップです。しかし、王様でもなければ独裁者でもありません。
協会員の多数が赤ありを望み、選手総会の場で話し合われ、多数決で赤ありが支持されれば、ルール変更は可能です。協会はそういう組織です。
どうですか逢川JJ、赤ありの議題を提出してみますか?
でも、その前に次の文章も読んでください。
視覚しょうがい者に不利になる
もう25年も前になりますが、最高位戦22期に20名の新人が入ってきました。
僕はいま協会の代表をやっていますが、当時は最高位戦の理事。しかも最高位(21期)でした。そんなわけで、新津潔代表から新人の教育係を仰せつかっていました。
最高位戦が麻将連合と分かれたときで、会員数が激減。20名というそれまでにない大量入会者をいれたのは、それが一因です。現Mリーガーの近藤誠一さん、村上淳さんらが入ってきた年です。
その中でA君がいました(いまはプロの世界にいません)。
気を張る研修を終えたあとに、遊びの麻雀を打ちたいということになって赤ありで遊びの麻雀を打ったのですが、彼が赤牌をツモ切ったあとに「あっ!」と言うことが二度重なりました。
「どうしたんだ?」と問いただすと、色弱であることを告白しました。
「赤牌も灰色に見えるんです」
普段、そんなことを考えたこともない僕には「灰色に見える」という返答がひどく印象に残りました。
A君が言うには、もともと手にある赤牌はうっすらと違いがわかるそうですが、ツモってきた牌や他家が捨てた牌では、瞬時にちがいがわからないそうです。
A君よりは軽度のようですが、もう一人色弱の人を知っています。
彼曰く、「真新しい牌だと大丈夫だけれど、使い古した牌だと識別は困難」だそうです。
そうした人が世の中には少なからずいます。だからでしょうか、赤牌にポッチが付いているものもあります。(盲牌でわかるようにするためでもある)
しかし、瞬間の判別ではやはり色弱者が不利になることは間違いありません。
さらに観るほうにも色弱者はいるわけです。盛り上がりを見せているMリーグですが、ツモ番のたびに画面は切り替わります。その短い時間の中で赤牌の有無を判別しようと目を凝らしている視聴者は全国でかなりの数だと思います。
もしも、協会が赤ありルールに変貌することがあるなら、配信卓では赤牌がひと目で違いがわかるような、たとえば「伍萬」が新字の「五万」とか、「ウーピン」がハートマーク5個とか、「ウーソー」が矢印5本とか、色だけでなく文字模様ごと違う特注牌にしたいですね。